ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』(梅田望夫著)を読む。


現在、世界一のモンスター企業として注目を集める「google」という会社のビジネスを軸に、ウェブを介した新しいビジネスモデル、ひいては新たな「生き方」までを射程に収めた、なかなか味わい深い本だ。


googleといえば、PCに日常的に触れている人であれば、すべての人が使っているであろう、あの検索エンジンのことだ。検索エンジン数あれど、いまやgoogleを用いずにウェブ検索を行う人はまれだろう。


しかし、あの便利な検索エンジンが、一介の私企業によって運営されているという事実の奇妙さに注目する人はあまりいない。googleは世界中の大多数の企業活動、あるいは私生活においてかなり大きな部分を占めるインフラを提供しているといえると思うのだが、実態は従業員わずか1000人の、シリコンバレーの私企業に過ぎない。これは考えてみると、非常に奇妙なことなのだが、その奇妙さに誰も気がつかない、というところに、実はgoogleという企業のおもしろさは凝縮されている。


本書の中でもたびたび引用されるgoogle社員の言葉である「もしも世界政府というものが存在するならば、そこで必要とされるものはすべてgoogleが用意する」というポリシーは、美しいまでに実効的である。


あらためて考えてみてほしい。なぜ、あれほどのインフラが無料で提供されているのか?


世界中のすべてのテキスト情報を検索管理できるインフラを提供しようという時に、いったい誰が、それを無料で提供しようと考えたのか、と。


言うまでもないことだが、googleは慈善団体でもないし、宗教団体でもない。社員1人あたり1000億円以上という常識はずれの時価総額をたたき出す株式会社である。


従来型のビジネスモデルを基本にしていては、彼らのビジネスを理解することはできない。


ビジネスは与えるところから始まる。googleはもちろんビジネスの最終的ではないにしても、新しいビジネスモデルへ向けた「扉」を確実に開いたといえる。


おそらく、この扉は閉じることはない。僕らは嫌がおうにも、「この先」の世界で生きていくことを求められることになるだろう。