靖国問題

 靖国問題で僕がいつも腑に落ちなかったのは、「あえて中国、韓国の感情を逆撫ですることで、何が得られるのだろう?」ということだった。
 一国の政治家ともあろうものがあそこまでこだわるのだから、何らかの実利的メリットがあるはずだと考える僕にとっては、「首相の個人的こだわり」だとか、「右翼的な人々からの支持」だとかいう理由では、小泉さんはじめ、歴代の首相の「靖国問題」は、全然納得がいかないものだった。
 彼は、メリットのないことに意地になるほどバカではないし(そのへんは民主党とはだいぶ違う)、右翼的な人々からの支持が、現在の政局においてそれほど重要なものとは思われない。

 内田樹さんの6月15日の日記は、ここ数年のこうした僕の疑問に、1つの回答(解釈?)を与えてくれたように感じた。

 なるほど。「中国、韓国の感情を逆撫でするよりも大きな、参拝のメリットとは何なのか?」という問いの立て方では、この疑問は解けなかったのだ。「中国、韓国の感情を逆撫でする」ということそのものにメリットがある、と仮定する。そうすればおのずと、就任以来一貫してアメリカ追従の姿勢を崩さない小泉首相の姿勢と、靖国参拝へのこだわりが一致点を見る。
 考えてみれば、小泉さんが就任以来一貫していること、といったら、もはやアメリカ追従、という姿勢以外にはないのだ。(民営化路線だって、自由化だって、ひもといていけば「そういうこと」だろう)

 靖国参拝アメリカ追従路線そのものが日本にとって正しい選択なのかどうか。僕にはまだ判断がつかない(中国の支配下に入るのって、たしかにやだし。まだ、アメリカのほうがましな気がする)。けれど、よその国の思惑にまんま乗っかっているのに、それを「愛国」と感じるあり方は、少し悲しいと思う。