天才の創りかた

川島隆太『天才の創りかた』(講談社)を読む。

天才の創りかた

天才の創りかた

川島氏は東北大学の教授で、「学習療法」というものの開発で近年注目を集めている脳科学者である。

「学習療法」の中味は単純計算や音読を繰り返すこと。要するに「公文式」である。これらの単純な「学習」作業が、脳の高次機能を司る前頭前野を活性化させることを川島氏は発見した。前頭前野の活性化によって、脳の高次機能を成長させる。これが「天才の創りかた」の骨格であるが、このへんの話に深入りしても仕方がないので、気になる人は読んでみてほしい。

私が気になったのは、脚注にあった神経細胞と神経繊維のお話。

大脳の神経細胞は2000億個、小脳の神経細胞は1兆個以上。
これらは基本的には増えることはなく加齢とともに減少するのだけれど、これらの神経細胞の間をつなぐ神経繊維は、年齢と共に増えていく。そして、このネットワークの豊富さが、俗に言う「頭の良さ」だと考えられるようになっている。

ここまでは多くの方がご存じだろう。しかし僕は、以下の「数字」に驚いてしまった。
1つの神経細胞は、神経繊維をつなぐ接点=シナプスを約2万個持っている。さらに、1つのシナプスは約10通りの神経伝達パターンを持っているというのだ。そうすると、1つの神経細胞は20万パターンの情報伝達様式を持っている、ということになる。(前掲書、119頁)

さらに、そういう細胞が大脳だけで2000億個あるわけだ。どういう計算になるのかわからないが、そのネットワークの原理的な可能性は、2000億の20万乗ある、ということになるのではなかろうか?(う〜ん。このへん、文系の悲しさ。違うのかな)

いずれにしても、大げさでなく、脳の中には宇宙があるわけである。