『私家版・ユダヤ文化論』
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/07/20
- メディア: 新書
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だいぶ前に読んだ本だけど、咀嚼するのに少し時間がかかったので今頃アップ。
まず少し自分の話をしよう。
大学の卒論を、僕は「幕末維新期における日本人の朝鮮観」というタイトルで書いた。
中身は若気の至りというやつで恥ずかしいばかりなのだけれど、奇妙な集中力をもって書くことのできた論文だった。
人はなぜ差別をするのか。どうして誰かを蔑む、ということがやめられないのか。
イジメはなぜ存在するのか。なぜなくならないのか(どう機能しているのか)。
朝鮮人−日本人という枠組みを超えた、こうした「差別論」の問いにたどり着いたがために、僕の研究作業は楽しい興奮に包まれていたのだと、そう考えている。
さて、ユダヤ人である。
内田樹は本書の中で再三にわたり、ユダヤ人を論ずることは、その人間が何者であるかを明らかにすることである、と書いている。
あらゆる差別の中で、ユダヤ人差別は特殊な位置を占めている。しかも、それは他の差別と「異なる」という意味で特殊なのではなく、他の差別、他の人間的事象すべてのルーツにユダヤ人差別がある、と考えざるを得ないような構造ゆえに、特殊なのである。
僕は、日本人の朝鮮観を眺めているうちに、いつのまにか、ユダヤ人のことを考えていたのかもしれない。
読後にそんなことをふと、考えた。