後継者名簿

朝日新聞に「素粒子」というコラムがあるのをご存じの方も多いかと思う。


夕刊1面の右端、広告欄に挟まれるかのようにあるそのコーナーは、いわば、「紙面の顔」の1つといっていいだろう。


2,3年前に、実家の父親から「最近の『素粒子』、やばいど」という話を聞いた時は、いつもの朝日新聞的「左馬鹿」なコラムでも書いているのかと思っていた。


しかし、ワールドカップの記事を読みたくて久々に目に飛び込んできた「素粒子」は、そんな次元の問題ではなくひどいしろものだった。

例えば6/24付けの素粒子はこんなふうだ。

後継者推薦名簿−−

ジーコに「プロ意識不足」と言われた日本チーム、後継の監督に村上ファンド氏はどうか。なにせ「私はプロ中のプロ」と公言してはばからない自身家である。

●「全身全霊で職責を全うしたい」と福井氏。日銀総裁が「全身全霊」で務まるのなら、大関の職責を「全身全霊」で果たしている白鵬関はどうか。そも脇は固い。

× ×

天才の後継者はいない。<美空ひばり死す軒雀眠れる間> 敏雄


さて、どこから手をつけていいものやら(笑)。


気になったので、前後の号の「素粒子」を読んでみると、どうやら今この欄を担当している某氏は、ニヒルな感じ(笑)で世情を皮肉るスタイルを信条とされているようである。

例えば、

>後継の監督に村上ファンド氏はどうか。

というのは、後に続く文を読むにどうやら皮肉のつもりらしいのだが、ジーコジャパンに対する皮肉なのか、村上ファンド氏に対する皮肉なのか、いまひとつ判然としない。「プロ意識不足」と言われたのは選手なのだが、どうして監督のプロ意識を引き合いに出すのだろうか? 残念ながら、私にはうまく理解できない。

さらに言えば、村上氏が「プロ中のプロ」であること自体は、事実認知として概ね正しいのではなかろうか。村上氏が自信家なのかどうかについては、そんな感じがするね、としか言いようがないけれど、「プロ中のプロ」というのは自身家であることと何の関係もないんじゃないでしょうか。

どうしよう。この人、ほんとにバカなのかしら。


続く日銀総裁エピソードは、編集子はよほど腹が立ったのか連日取り上げておられる。この日は、「全身全霊」をキーワードに大相撲の白鵬につなげていっているわけですね。

なるほど。

こんな切り口が許されるなら、こんなのも許されるんでしょうか。

「玉田は、もう少し転ばないように、我慢して競り合って欲しいですね」
若乃花に出てもらいましょうよ」

「今岡はヘッドアップが早いですね」
「もっとアゴを引かなあかん。代打、ヴァンダレイ・シウバ!」


仮にも全国紙夕刊のトップをかざるコラムが、いつの間にか「タクシーの運ちゃんのたとえ話」みたいなものになっていることに驚きを禁じ得ないのでした。